上級 / 応用文法
受身と使役
中級までで、タイ語の基本的な語順(主語+動詞+目的語)と時制の表し方を学んできました。上級では、その語順を保ったまま「誰かが誰かに何かをされる(受身)」「誰かが誰かに何かをさせる(使役)」という、行為の方向を組み替える表現を扱います。
日本語は「〜れる・られる」「〜せる・させる」という活用で受身と使役を作りますが、タイ語には動詞の活用がありません。その代わりに、ถูก / โดน / ได้รับ(受身)や ทำให้ / ให้(使役)といった専用の語を動詞の前に置いて表します。どの語を選ぶかで、話し手が出来事を「被害」と感じているのか「恩恵」と感じているのかまで伝わるのが、この文法のおもしろいところです。
受身の三本柱 — ถูก・โดน・ได้รับ
タイ語の受身は、基本的に「受身マーカー + (動作主) + 動詞」という形をとります。動作主は省略できます。
| マーカー | 読み | ニュアンス | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| ถูก | thùuk | 中立〜被害 | 一般的な受身。悪いこと・中立的なこと |
| โดน | doon | 被害・迷惑(口語的) | 「〜されてしまった」の感情がこもる |
| ได้รับ | dâi-ráp | 恩恵・中立(フォーマル) | 良いこと・書き言葉 |
まず基本の ถูก です。
- ผมถูกครูดุ — phǒm thùuk khruu du — 私は先生に叱られた
- แมวถูกรถชน — mɛɛw thùuk rót chon — 猫が車にはねられた
ถูก は元々「正しい・当たる」という意味の語ですが、受身マーカーとしては悪い出来事に使うのが基本です。動作主(ครู「先生」)はマーカーの直後に置きます。
次に โดน。意味は ถูก とほぼ同じですが、より口語的で「被害を受けた」という感情が強く出ます。
- เขาโดนตำรวจจับ — kháo doon tamrùat càp — 彼は警察に捕まった(つかまっちゃった)
- ฉันโดนหลอก — chǎn doon lɔ̀ɔk — 私はだまされた
会話では ถูก より โดน のほうが自然に響く場面が多く、ニュースなど書き言葉では ถูก が好まれます。
最後に ได้รับ。「受け取る」が原義で、良いこと・中立的なことに使う、ややフォーマルな受身です。
- เขาได้รับรางวัล — kháo dâi-ráp raangwan — 彼は賞をもらった(賞を授与された)
- โครงการได้รับการอนุมัติ — khroongkaan dâi-ráp kaan-anúmát — 計画は承認された
ได้รับ の後ろによく続く การ + 動詞 の形(例: การอนุมัติ「承認」)は、フォーマルな受身の定番です。
ถูก と โดน をどう使い分けるか
同じ「叱られた」でも、話し手の気持ちで語が変わります。
| タイ語 | 読み | ニュアンス |
|---|---|---|
| ถูกดุ | thùuk du | 叱られた(事実の報告) |
| โดนดุ | doon du | 叱られちゃった(不満・被害感) |
友達に愚痴をこぼすときは โดน、報告書に書くときは ถูก、と覚えるとよいでしょう。
使役 — ทำให้ と ให้
使役は「AがBに〜させる/〜する状態にする」です。中心となるのは ทำให้(〜させる・〜という結果を引き起こす)と ให้(〜させる・〜してもらう)です。
ทำให้ は「結果・変化を引き起こす」使役で、無生物が主語でも使えます。
- ฝนทำให้ถนนลื่น — fǒn tham-hâi thanǒn lʉ̂ʉn — 雨が道路を滑りやすくする(雨で道が滑る)
- ข่าวนี้ทำให้ฉันเศร้า — khàaw níi tham-hâi chǎn sâo — このニュースは私を悲しくさせた
ให้ は「人に〜させる・〜してもらう」で、相手に行動を促す使役です。
- แม่ให้ลูกกินข้าว — mɛ̂ɛ hâi lûuk kin khâao — 母は子供にご飯を食べさせる
- ครูให้นักเรียนอ่านหนังสือ — khruu hâi nákrian àan nǎngsʉ̌ʉ — 先生は生徒に本を読ませる
| 使役語 | 読み | 使い分け |
|---|---|---|
| ทำให้ | tham-hâi | 結果・状態変化を引き起こす(無生物主語可) |
| ให้ | hâi | 人に行動をさせる・してもらう(依頼・許可も) |
ให้ には「許可(〜させてあげる)」の意味もあり、文脈で「させる/してもらう/させてあげる」が決まります。
日本語の受身との違い
日本語は「私は雨に降られた」のような迷惑の受身を自然に作りますが、タイ語ではこれをそのまま受身にしません。ฝนตก(雨が降る)を使い、被害は文脈や ทำให้ で表します。無生物・自然現象を動作主にした受身は避けるのが原則です。また、良いことには受身より ได้รับ を使う、と押さえておきましょう。
もう一点、日本語では「(私は)先生に褒められた」のように受身を好みますが、タイ語では能動文で ครูชมผม(先生が私を褒めた)と言うほうが自然な場合が多くあります。タイ語の受身は「被害・迷惑」に傾いた ถูก/โดน が中心で、良いことをわざわざ受身にする発想が弱いためです。褒められて嬉しい気持ちを伝えたいなら、ผมได้รับคำชมจากครู(先生からお褒めの言葉をいただいた)のように ได้รับ を使うと自然です。
ได้ と ได้รับ の混同に注意
初学者が混乱しやすいのが、ได้(dâi)と ได้รับ(dâi-ráp)の違いです。形が似ていますが役割が違います。
| 語 | 読み | 働き | 例 |
|---|---|---|---|
| ได้ | dâi | 「できる」「〜した(完了)」を表す助動詞 | ผมทำได้ できる |
| ได้รับ | dâi-ráp | 「受け取る・〜される」受身の動詞 | ผมได้รับของขวัญ 贈り物をもらった |
- เขาทำได้ — kháo tham dâi — 彼はできる(可能)
- เขาได้รับเชิญ — kháo dâi-ráp chəən — 彼は招待された(受身)
ได้ 単独は「可能・完了」、ได้รับ は「受け取る・される」と、意味の中心が異なることを押さえましょう。
よくある間違いと自然な言い方
- ✗ ฝนถูกตก(雨が降られる)→ ○ ฝนตก(雨が降る)。自然現象は受身にしない。
- ✗ ผมถูกให้รางวัล(賞をされる)→ ○ ผมได้รับรางวัล。良いことは ได้รับ。
- 使役の ให้ と依頼の ให้ は同形。文脈で「〜させる/〜してもらう/〜してあげる」を判断する。
このように、受身・使役はマーカーの選択そのものが話し手の評価(被害か恩恵か)を映します。語を選ぶ感覚を磨くことが、自然なタイ語への近道です。
まとめ
- 受身は ถูก(中立〜被害)/โดน(被害・口語)/ได้รับ(恩恵・フォーマル)を使い分ける。
- 「マーカー+動作主+動詞」の語順。動作主は省略可能。
- 使役は ทำให้(結果を引き起こす)と ให้(人に行動させる)が中心。
- 日本語の迷惑の受身をそのままタイ語にしない。良いことは ได้รับ で表す。