ランパーン

โกโกโกโก…

ランパーン——蹄の音が響く『馬車と鶏碗の古都』

ลำปางlam-paang

ランパーン——蹄の音が響く『馬車と鶏碗の古都』

チェンマイの南東、静かな川沿いの街に、今も蹄の音が響いている。ลำปาง/ランパーン(lam-paang)——ここは、タイで唯一、馬車が生活の風景として残る、時が止まったかのような古都なのだ。

カッポ、カッポ、と石畳を打つ馬の蹄。それは、この街が近代化の速度に決して飲み込まれなかった証だ。急がぬこと、変わらぬこと——それをこの地は誇りとしている。ゴゴゴ、ではない。この街に似合うのは、もっと穏やかな時の刻みなのだ。

この地の『魅力』

ランパーンの名物、それは馬車(ロットマー)である。かつて交通の要衝として栄えたこの街には、今も観光用の馬車がのんびりと走る。屋根付きの可愛らしい馬車に揺られ、蹄の音を聞きながら古い街並みを巡る——これほど優雅な時間の過ごし方が、他にあるだろうか。

そして、この地には北部随一の名刹がある。ワット・プラタート・ランパーン・ルアン——木造建築の傑作とされるこの寺は、堅牢な城壁に囲まれ、古のランナー建築の粋を今に伝える。境内の穴から差し込む光が、堂内に仏塔の像を逆さに映し出す「光のマジック」でも知られ、訪れる者を静かに驚かせる。

川沿いには、チーク材の古い豪邸「バーン・サオ・ナーク」も残る。無数の柱に支えられたこの木造家屋は、かつての林業で栄えた時代の記憶そのものだ。

食——胃袋の戦い

ランパーンもまた、北部ランナー料理圏の一角。**ข้าวซอย/khâao-sɔɔi(カオソーイ)**をはじめ、香草ソーセージのサイウア、青唐辛子ディップなど、北部の滋味あふれる料理を静かな街で堪能できる。

だが、この地の食を語るなら、器の話を抜きにはできない。ランパーンは、タイを代表する陶器の産地。特に、白地に鶏を描いた素朴な丼「シャム・ガイ(鶏碗)」は、この街の代名詞だ。飾らぬ絵付けの碗で麺をすすれば、味もまた素朴に沁みる。器と料理が一体となって、初めて食は完成する。ランパーンは、それを教えてくれる街なのだ。

川沿いの夜市では、地元の人々に混じって焼き物や麺を頬張るのが一番。**อร่อย/à-rɔ̀i(アロイ=おいしい)**の一言とともに、飾らぬ北方の味を味わい尽くせ。

文化——受け継がれし魂

ランパーンの文化を象徴するもの——それは、象である。この地には、タイ有数の象の保護施設(タイ象保護センター)があり、かつて林業を支えた象たちが、静かに余生を送っている。丸太を運び、森を切り拓いた働き者の象たち。彼らは、この地の産業史そのものを背負った、生きた記憶なのだ。

そして陶器づくり。ランパーンの地層から採れる良質な白土が、この地を陶器の里へと押し上げた。鶏の絵の碗をはじめ、素朴で温かみのある焼き物は、機械大量生産の時代にあってなお、手仕事の価値を静かに主張し続けている。象と陶器——この地の魂は、大地と生き物に深く根ざしているのだ。

生活——この地で暮らすということ

ランパーンの暮らしは、穏やかだ。馬車が走り、川が流れ、陶器の窯から煙が上がる。近代的なショッピングモールもあるが、街の根底に流れる時間は、どこか懐かしくゆったりしている。

一方でこの地は、メーモの巨大な火力発電所を抱え、タイ北部のエネルギーを支える一面も持つ。石炭を掘り、電気を生み、国の血流を支える——のどかな古都の顔の裏に、そんな逞しい産業の背骨がある。優雅さと実直さ。この二つを併せ持つのが、ランパーンという街の奥深さなのだ。

旅の心得

ランパーンは、声高に自らを誇らない。馬車の蹄の音のように、控えめで、穏やかで、しかし確かな存在感を放っている。

急ぐ旅人には、この街の良さは見えないだろう。だが、馬車に揺られ、鶏の碗で麺をすすり、光の差す古寺に佇み、象の瞳を覗き込んでみろ。そこには、速さを競う現代が忘れてしまった『ゆっくり生きる勇気』がある。それを持ち帰れる者こそ、真に豊かな旅をした者なのだ。